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November 05, 2005

宮本 輝: にぎやかな天地

フリーで豪華本を作っている主人公(32歳・男)が「発酵食品」に関する本造りを依頼されることから身の回りに巻き起こる変化についての話。

糠漬、納豆、熟鮓、鰹節、味噌、醤油など微生物の力で熟成される発酵食品は元来時間をかけて作られるもの。
その昔ながらの製法を頑なに守り続けている職人たちへの取材を通して、主人公は自分の仕事である豪華本と呼ばれる少部数の書物との共通点を見出し、今後も携わって行くことを決意する。

食物にしても書物にしても、インスタントで軽く大量に作られるものが蔓延していることに対する抗いが根底にあるのは間違いないが、単に「昔はよかった」とか「なんでも反対」と叫ぶのではなく、本当によいものを評価してくれる人が出始めているというトレンドを踏まえての優しい視線が全編に渡って貫かれており心地よい。

人間ドラマの方でも、主人公の祖母が亡くなるまで秘していた想い、それにまつわる出会い、主人公の父の死に関わる人のつながりなどが、やはり穏やかに描かれている。
そこに登場する誰もが優しく、恨みや妬みや嫉みに無縁な姿は、当たり前だけれど、それゆえにつながっていく様は涙を誘う。

それこそ大きな事件や大恋愛はないけれど、普段生きていることへの想いを新たにしてくれる作品。

宮本 輝: にぎやかな天地 上

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