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November 30, 2005

安彦 良和: マラヤ

文明が破滅し原始の世となった未来、女性優位で作られた世界を巡る話。

主人公マラヤは、男性の欲が文明の破滅をもたらしたとして女性のみで構成されている断崖に囲まれた世界の闘士だったが、同じ闘士の妬みにより外の世界に堕ち、男性で構成されている社会を知る。

作者本人があとがきで語っているとおり、男女の立場を入れ替えて女性が支配する世の中になったとしてすべてがうまく行くのか、といったフェミニズムのあり方についてのメッセージが色濃く出ている。
その割に、ファンタジー作品としては定番だけれど、今ひとつ役割のはっきりしない竜が登場するなど消化不良の部分も残る。
あまりに予定調和なラストも今ひとつ。

本書はチクマ秀版社のレジェンドアーカイブスという企画の中の作品。
高額なだけに、オールカラーページで質の高い紙を使った贅沢な作りとなっており、作者のファンであれば揃えておきたい体裁となっている。

安彦 良和: マラヤ

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November 29, 2005

なるしま ゆり: 鉄壱智 2

日本らしい土地の古代らしき時代で神やら神らしきものが争ったりしている話。

なるしまゆりの長編は特に舞台設定や人物説明がなく、エピソードを重ねていくことでそれらを読者に組み立てさせる構成になっている。
その割には人物関係が敵味方にきれいに分かれるわけでもなく、入り組んでいるために、それらを把握するのに長い時間がかかる。

つまり、この巻でも物語の全体図は見えてこないと言うことです。
読むには次巻まで待つことのできる忍耐力が必要でしょう。

なるしま ゆり: 鉄壱智 2 (2)

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November 28, 2005

菊地 秀行: 魔界行―完全版

一般人として生活していた生体強化戦士が妻と子供を殺されたことで復讐に赴く話。

殺害にアメリカのギャングだけでなく日本の暴力団も加わっていたことを知り、日本へ飛んだ主人公は、当の新興勢力の暴力団に死人を操る謎の敵の存在を知る。
さらに暴力団の壊滅を狙う日本の公安特別チーム、主人公に生体強化を施した米軍が秘密保持を目的として新たに送り込んだ生体強化戦士が戦いに加わっていく。

20年前に新書版3巻構成として出版された作品の再版もの。3巻を1冊にまとめているだけに強烈な分厚さを誇る。

作品としては20年前に読んでいるのだが、その質の高さには再認識させられる。
武器に対するマニアックな程の詳細な記述、バリエーション豊かで描写の細かい陵辱シーン、そしてアクションシーンの具体的ながら落とさないスピード感。
この作者の最近の作品に欠けていたり、弱くなっていると改めて感じざるを得ない。
一方で、その明らかに常軌を逸した唐突なラストシーンは読者を20年間待たせるに値するものだったと言えよう。
もっとも、20年を経て出てきたものが期待に応えるものであったかどうかは疑問ではあるのだけれど。

菊地 秀行: 魔界行―完全版

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November 27, 2005

ひぐち アサ: おおきく振りかぶって Vol.5

公立高校の新設野球部の話。

いよいよ夏の甲子園を目指す県大会予選が始まり、初戦の相手は強豪校。
1年生ばかりの野球部に対する強豪校の油断、そこにつけ込むインサイドワークなど、一球一球ごと、1プレー1プレーごとの心理描写が秀逸。
これだけの思惑がプレーに詰まっていると知れば、野球に対する見方が変わるかもしれないと思う。

とはいえ、これだけ丹念な描写がいつまで続けられるのか、それが心配にもなってしまう。
ちなみに、この巻ではプレーボールから3回表までしか進んでいない。

ひぐち アサ: おおきく振りかぶって Vol.5 (5)

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November 20, 2005

よしなが ふみ: 執事の分際

フランス革命前後を舞台に、貴族である主人とその執事の関係を描いた作品。

ボーイズラブ系の雑誌に掲載されたものと同人誌掲載のものをまとめ、主従関係を一貫して描いている。
若くして貴族の家に雇われた中国系の平民であるクロードは主人にずっと仕え、その死後も息子アントワーヌにもその愛情を注ぐ。
そこでは、プライド高く我が侭だけれど、自分がいないと何もできない主人と、あくまで執事であるという立場をわきまえながらも主人をうまく管理している執事の主従関係は大変面白く読むことができる。

直接的な肉体描写も少なくないが、どちらかと言えばよしながふみの魅力である間で描く心理描写の多い作品を読んで欲しい。

よしなが ふみ: 執事の分際

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November 19, 2005

曽田 正人: め組の大吾 (3)(4)

若き消防隊員の活躍を描いた作品の文庫版。

休暇先でのホテル火災、土砂崩れ現場からの急患の搬送、高速道路上の事故現場脇のビルクレーンと主人公は次々と伝説の救助を成し遂げる。
そこで存在感を増していくエリート部隊である特別救助隊(レスキュー隊)。
そして主人公はそのエリート的な存在に反発しながらもレスキュー試験に挑戦、そこでもまた伝説として語り継がれるような活躍を始める。

災害のバリエーションには限界があるし、そこでの奇跡的な救助にもいずれ無理矢理な印象は否めなくなってしまうと考えていたので、レスキュー試験に挑戦というのは、うまく考えたなという感じ。
一方で、正面の敵から逃げているような感想を持ったものだった。雑誌連載を読んでいた当時としては。

曽田 正人: め組の大吾 (3)

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November 14, 2005

鴉 -KARAS- 第弐話 コレクターズ・エディション(初回限定生産)

近未来の新宿で妖怪の仕業と見られる怪事件が発生する話。その2巻目。

事件を解決しようとする刑事2人組。鵺と呼ばれる目立つ格好の男。妖怪を世話している鴉に変身する男。
何も事前知識がないと1巻と2巻を観ても分かるのはそんなところ。

画面は相変わらず暗く(夜のシーンが多いからと言われればそれまでだが)、画面の情報をすべて読み取ることが難しい。

特典ディスクは声優とスタッフのインタビューが収められたもの。余程のファンでなければ本編より長いこれらを見続けることは困難であろう。

: 鴉 -KARAS- 第弐話 コレクターズ・エディション(初回限定生産)

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November 13, 2005

村上 春樹: 東京奇譚集

5編の短編を集めた作品集。

タイトルにするだけあって、どこか不思議な話ばかり。
でも、村上春樹の作品は以前からどれもそんなようなものだった気がする。
どちらかと言えば、まだ分かりやすい部類に入るかと。

どれも良いけれど、中では「日々移動する腎臓のかたちをした石」がお気に入り。
十代の頃に読んだらはまったであろう。

村上 春樹: 東京奇譚集

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November 12, 2005

とり みき: クルクルくりん (3)

1983年から1984年に少年チャンピオンに連載されていた作品の文庫化。最終巻。

終盤にかけて、思い切りの良い作品が続く。その一方で、1話完結から2話3話と続く話も出てきて、あれっと思わせるところも。

また、女性キャラクターの露出が多くなっているのも特徴。今の少年誌では難しいかも。

あとがきはゆうきまさみ。時代を思い起こさせるエピソードが語られている。

とり みき: クルクルくりん (3)

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November 09, 2005

夢枕 獏: 餓狼伝 17

クレジットでは夢枕獏の名前が出るけれど、実際には漫画担当の板垣恵介の色が濃い格闘技マンガ。

何でもありとなったルールに各界の格闘技家が集う全日本空手道オープントーナメントの2回戦3試合と半分を描く。

その内、メインキャラクターの試合は1試合しかなく、すでに誰が強いかと言うことよりも、作者がそれぞれの格闘技についてどう考えているか、と言うことに興味が移っているかのよう。

と言うことで、3回戦は次巻以降に持ち越し。

夢枕 獏: 餓狼伝 17 (17)

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November 07, 2005

大塚 英志: 多重人格探偵サイコ/新劇 雨宮一彦の消滅

コミック「多重人格探偵サイコ」の戯曲版脚本。

すでにコミック、TVドラマ、小説、ドラマのノベライズと多様なメディアの中でバリエーションを増やしている「多重人格探偵サイコ」を知らないと到底読みこなせない内容。
しかも大塚英志の最近の活動を反映するかのように、日米の関係が解説されていたりもする。

ラストはリアルとフィクションとの関係を、物語の内と外と捉えて物語の外に出ようとする登場人物たちの姿を描いている。
そのモチーフは小説版辺りで出てきたものだっただろうか。その意味で新しいラストが描かれているわけではないので、コミック版を読んだだけの読者には面白くないかもしれない。

確かにリアルとフィクションの関係を描くのに演劇というメディアは表現方法として合っているように思える。
とはいえ、演劇に詳しくない自分には稚拙に思えるようなこの本を読んだ演劇界の人々が果たして舞台にかけたいと思えるものかどうかは疑問。

大塚 英志: 多重人格探偵サイコ/新劇 雨宮一彦の消滅

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November 06, 2005

BLOOD THE LAST VAMPIRE デジタルマスター版(UMD Video)

1966年の東京を舞台に剣を持った少女が謎の生物と戦う話。2000年公開作品のUMD化。

米軍横田基地内の学校に潜入した少女はそこで生徒に化けて潜伏していた敵と戦う。

公開時にはフルデジタルアニメーションとして話題になった作品は48分という長さもあって、パイロットフィルムのような印象を与える。
全体的に暗く、PSPの画面での再生が心配されたが、意外に細部まではっきりと見えた。
また、短さもPSPというプレーヤーにとっては負担が少なく、良いコンテンツと言えるだろう。

2005年10月からBLOOD+というTVアニメが始まったらしく、2枚組の2枚目は告知もの。
とりあえず別物らしく、見る必要はなさそう。

BLOOD THE LAST VAMPIRE デジタルマスター版(UMD Video)

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November 05, 2005

宮本 輝: にぎやかな天地

フリーで豪華本を作っている主人公(32歳・男)が「発酵食品」に関する本造りを依頼されることから身の回りに巻き起こる変化についての話。

糠漬、納豆、熟鮓、鰹節、味噌、醤油など微生物の力で熟成される発酵食品は元来時間をかけて作られるもの。
その昔ながらの製法を頑なに守り続けている職人たちへの取材を通して、主人公は自分の仕事である豪華本と呼ばれる少部数の書物との共通点を見出し、今後も携わって行くことを決意する。

食物にしても書物にしても、インスタントで軽く大量に作られるものが蔓延していることに対する抗いが根底にあるのは間違いないが、単に「昔はよかった」とか「なんでも反対」と叫ぶのではなく、本当によいものを評価してくれる人が出始めているというトレンドを踏まえての優しい視線が全編に渡って貫かれており心地よい。

人間ドラマの方でも、主人公の祖母が亡くなるまで秘していた想い、それにまつわる出会い、主人公の父の死に関わる人のつながりなどが、やはり穏やかに描かれている。
そこに登場する誰もが優しく、恨みや妬みや嫉みに無縁な姿は、当たり前だけれど、それゆえにつながっていく様は涙を誘う。

それこそ大きな事件や大恋愛はないけれど、普段生きていることへの想いを新たにしてくれる作品。

宮本 輝: にぎやかな天地 上

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