能田 達規: オーレ! 1 (1)
地方公務員が地元サッカーチームのスタッフとして運営に関わっていく話。
千葉県上総市の市役所に勤める中島は4年に1度ワールドカップで日本代表を応援する程度のサッカーファンであったが、地元プロ2部リーグのサッカーチーム・上総オーレの通訳として出向を命じられる。
それまで全く無関心であった地元チームの現実に失望しながらも、熱く関わっていく姿を描く。
同じ作者の「ORANGE」が同じプロ2部リーグを題材にしながらも、選手の側から描かれ、財政難も選手にとっての苦労話となっていたのに対し、「オーレ」では裏方であるスタッフの立場から描かれているのが特徴。
主人公の中島はワールドカップで日本代表は応援するものの、国内リーグには関心なく、その現状にも疎い。
こうした日本代表限定サッカーファンは決して少なくなく、地元浦和レッズの試合をずっと見続けている立場からすると、せっかく面白いものを観ようとしない人たちという印象を持ち続けてきた。
「オーレ」においても、中島は地元チームを応援するサポーターの姿に驚き、クラブに積極的に加わっていく姿が描かれている。
そのため、単純に日本代表限定サッカーファンを揶揄するだけかと思いきや、クラブのこれまでを知るスタッフに対して中島は叫ぶ。
「どうしてお前らはそんな感動を独占してんだよ!!」
「お前らだけで楽しんでんじゃねーよっ!!!」
ここで読者としては涙を禁じ得なかった。
日本代表限定サッカーファンだって、すべてを知った上で国内リーグに興味がないわけではない。
日本代表にあるような感動を求めているにも関わらず、それがどこにあるかを知らないだけなのかもしれない。
それに気付かせてくれる名セリフとして記しておきたい。
やる気のない地方公務員が出向先の民間企業で...というストーリー構成は、(原作も読んでいないし映画も観ていないけれど)『県庁の星』を思い起こさせる。
けれど、そんなことも越えた感動がサッカーという題材にはある。
おまけマンガも付いていて、お得感もあり。
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