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July 16, 2007

内沢 旬子: 世界屠畜紀行

各国の屠畜事情を文章とイラストでまとめたルポルタージュ。

屠畜とは、動物を死に至らしめて解体をする作業のこと。
残念ながら日本国内では被差別部落が担う職業として忌み嫌われてきた。
そうした差別が表向きなくなった(とは言えないけれど)今でも、その作業が表立って紹介されることはなく、違った意味でアンダーグラウンドな印象を持つものとなっている。

この本では、韓国、バリ島、モンゴル、エジプト、イラン、インド、チェコ、アメリカ、そして日本の屠畜場、また家庭での屠畜の状況と、周囲からの差別意識の有無についてまとめられている。

イスラム社会では念に何度かの祭の際に家畜をつぶして食べる文化がある。
韓国にも犬を食べる食文化がある。

そうした文化が直面している現実と、屠畜に関する周囲の見方が興味深い。
日本と同じように歴史的背景で被差別職業であった国もあれば、手に職を持った職人として尊敬を集めている国もある。
ただ、共通しているのは生活向上により屠畜に接することのない層が出現していること、それ故に血肉を怖がり、血肉を扱う職業を忌み嫌う視点が台頭していること、そして欧米からの動物愛護の視点が影響を与えていることだろうか。
それは各国固有の文化と西洋文化との戦いのようにも見える。

動物を「かわいそう」と感じるのは勝手だし、殺すことに反対することも勝手だけれど、我々の社会は動物を殺すことなしには成り立たない。
肉を食べることはもちろん、皮革製品、油脂などで活用される範囲は広い。
欧米の動物愛護団体には本格的なベジタリアンで動物由来のものには手を出さないくらいに徹底しているらしいけれど、そこまでの気合いがないのであれば決して目を逸らしてはいけないし、軽々に「かわいそう」などと口にしてはいけない。

また、食の安全が叫ばれていて、産地偽装、O157やBSEなどの問題があるにも関わらず、その対策が具体的にどう行われているのか、どんな人たちがどのような作業をしているのか、我々は知らないし、知らされることもない。
その役割を担うはずのマスコミに、屠畜が被差別部落問題と結びついたタブーという認識があるための結果だとしたら、とても哀しいことではある。
どのような人たちの努力によって食の安全が担保されているのか、そのこと1つを取ってみても、この本の持つ意義は大きい。

内沢 旬子: 世界屠畜紀行

内沢 旬子: 世界屠畜紀行

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