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August 15, 2007

保木 邦仁: ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか

第16回世界コンピュータ将棋選手権大会を優勝し、プロ棋士と公開対局を行った将棋ソフト「ボナンザ」の開発者・保木邦仁氏と、その公開対局での対戦相手渡辺明竜王との共著。

この公開対局をリアルタイムでは知らなかったのだけれど、その後のニュースを読み、また偶然NHKのテレビ番組を観て、大変面白く感じていた。

本書では保木氏側から「ボナンザ」の開発に至る経緯とそのコンセプトが、渡辺竜王からは対局に至るまでの準備と意気込み、実際の対局の状況解説が述べられ、構成されている。

保木 邦仁: ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21 C 136)

保木 邦仁: ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21 C 136)

コンピュータチェスでは実績がありながら、将棋ソフトでは試みられていなかった全幅検索法を、それまで門外漢だった開発者がそれ故に取り組み、開発したものがそれまでの将棋ソフトを破り、評価されるまでは、その状況への戸惑いも含めて興味深い。

そのアルゴリズムなど、簡単には理解できない部分もあるが、基本的には計算によって状況を評価し、より期待のできる手を打っていくというコンピュータ将棋の本質について、「人間のような」とか「渋い」とか、「迷った」といった慣用句で表現されることへ素直に面白さを感じているところは理系な開発者っぽさを見せている。

それに対比するように、渡辺竜王はコンピュータを対戦相手として研究、クセを見破り、対処法を模索してくるなど、擬人化させているかのような書き方が面白い。

また、二人の対談もまったく異なった立場で勝負をすることになったもの同士として、ズレも楽しみながら参加している様子が見て取れて好感が持てる。

後半は勝負を離れて、これからのコンピュータ将棋の方向性について、また棋士のあり方について、お互い述べあっている。
いずれも一般には馴染みのない世界に身を置いているためか、喩えを使ったり、文体は極力分かりやすくと意識されていることが伝わってくるようで、理解はしづらくとも読みやすい。

特に渡辺竜王の勝負に関する書き方は完全にアスリートのそれであり、スポーツ面に掲載されることを納得させるものとなっている。
もっと、こうした将棋のスポーツとしての面白さ、棋譜や盤面は読めなくとも、そこを戦場としている棋士たちの攻防を面白く、熱く伝えられる手段、媒体はないものかと思ってしまうほど。

最後に保木氏より科学的思考として、基礎科学を生業としているだけあって、一見役に立たないような研究も何かに役立っていくものであると訴えている。
また、そうした物事を科学的に思考することこそが、マイナスイオンといったエセ科学に騙されないことにつながる、と意外なほどはっきり述べている。

エセ科学に対する反論はネットでは散見されるようになっているが、まだまだ一般的になっているとは言い難い。
科学に依って立つ者が今回のような一般向け書物を手掛ける際には、必ずエセ科学に対する反論と、そうした物事に対する見方や思考について述べるようにすべきではないかと考えた。

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