戸田 誠二: 美咲が丘ite 1
美咲ヶ丘という架空の住宅地を舞台に、そこで生きる人々を描いたオムニバス。
不倫している夫にボクシングを始める妻、おやつを取り上げられた小学生、隠れて犬を飼っているアルバイト女性、歌手を目指す女性、ゲーム開発と婚約者の間で揺れるプログラマー、平凡でいることを自らに課して生きてきた女性。
それらのエピソードには驚くようなドラマはほとんどない。
探せば身の回りにあるようなエピソードでしかない。
けれど、そこには熱い感情が流れている。
情熱ばかりではないかもしれない。
諦めであったり、哀しさであったり、やりきれなさであったりするかもしれない。
それでも、そこに相対した人たちは、心に熱い固まりのようなものを抱えながら、現実に向き合っていく。
平凡だからと言って、ドラマがないわけではない。
TVドラマやハリウッド映画にはならないかもしれないけれど、そこで吐き出す言葉や流す涙は本物である。
そんな平凡な日常を切り取った作品たちはとても貴重に思える。
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