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April 18, 2013

東京ヴォードヴィルショー『パパのデモクラシー』

戦後間もない東京の神社を舞台に神主一家と、家がないとそこへ転がり込む面々の話。

職を失った元特高警察の男を居候させていた神主の家に、元華族の夫人が家をなくして困っている面々を引き連れてやってくる。
その中の男たち3人は映画会社で労働者の権利を訴え会社と戦っており、神主にも権利を主張して女性たちを巻き込んで対立していく。
また、家事に忙殺されていた神主の長男の嫁は、女性の権利や自立という言葉に感化されていく。
さらに転がり込んでいたチンピラと神主の次男の関係に闇物資の横流しやゼネストなどが絡んで新たな時代への期待と失望が描かれていく。

民主主義や家族制度、天皇の位置づけまで大きく変わった戦後の中で、人々がそれぞれどのように生き延びていくか、それまでの考え方や生き方をどう変えていくか、それぞれの立場で必死に考えている様子は、また静かに価値観や制度が変わろうとしている現代から見ても何か通じるところがあるようにも思える。
とはいえ、観ている側も演じている側も、多分に書き手もリアルにその時代を知らないわけで、実際に起こったことをベースにしているとはいえ、そこで生きていた人たちはどんなことを感じて考えていたのだろうかと改めて思った。

最前列だったため舞台をすべて視界に入れることが出来ず、舞台の左右や上下(茶の間と物干し台)で同時進行する場面は見にくい部分もあった。

タイトルに関連するくだりは最後のシーンで唐突に出てくる印象。
もう少し前振りがあっても良かったかもとは思う。

~2013.4.5 座・高円寺1にて~

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April 17, 2013

村上 春樹: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

36歳のエンジニアが年上の恋人に促されて絶縁していた高校時代の親友たちに会いに行く話。

ストーリーとしては上の1文ですべてを言い尽くしているくらいのシンプルなもの。それ以上でもそれ以下でもない。
これまでの作品に比べれば、ポルノ成分もファンタジー成分も少なめで、文章も読みやすい。

個人的に気になっていたのは、携帯電話やインターネットが存在する世界を描くか否かだったが、結果として舞台は現代となっており、携帯電話もインターネットも存在する。
ただ、それらをもっぱら活用しているのは恋人であり、主人公は一般レベル。さらにそれらが存在しない(一般的になっていない)時代の昔話が多く語られる。

もしかすると続編を求める向きもあるかと思うが、逆に最後の1章はいらないように感じた。
続編ではなく同じレベルの読みやすい中編をもう少し短い間隔で書いてくれればと思うのは出版社の論理だろうか。

村上 春樹: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上 春樹: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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