October 31, 2013

舟を編む

総合出版社の辞書部に配属された若手社員が十数年を掛けて辞書を作る話。石井裕也監督作品。原作は未読。

1995年、人とのコミュニケーションが苦手で営業部ではうだつが上がらない馬締(松田龍平)は、定年を前にした辞書部編集者、荒木(小林薫)にスカウトされ、新しい国語辞典「大渡海」の編集を監修の松本(加藤剛)の下で調子の良い若手編集者、西岡(オダギリジョー)、ベテラン女性契約社員、佐々木(伊佐山ひろ子)と共に任される。
言語学を専攻していた馬締は地味で根気のいる言葉を拾っていく作業を淡々とこなし、辞書づくりに魅せられていく。また下宿先の大家タケ(渡辺美佐子)の孫娘、香具矢(宮崎あおい)との奥手で不器用な恋を通して、徐々に周りと心を通わせていく。
会社の経営上の観点から制作中止の危機もありながら、10年を経て辞書は完成に近づいていく。

テレビCMではもっと恋愛模様が長く描かれるのかと思ったが、割とあっさりした感じが良かった。その分、本筋である辞書編纂作業が丁寧に描かれてはいるのだが、端折っている部分があることは否めず、きちんと大変さや面白さが伝わっているかどうかはちょっと分からない。

気になったのは95年当時を描いたシーンで西岡が「ヤバい」に肯定的な意味合いがあることを話していたが、当時はまだそうした使い方は多くなかったのではないか。
同様に辞書部でブラウン管のパソコンで10万語以上の見出し語を整理するシーンがあるが、当時のパソコンの能力でそれだけのことができるか、また辞書で使うような漢字を処理できただろうか。

役者では95年当時の西岡の恋人、三好(池脇千鶴)がはまり役。
宮崎あおいが若い時を描いたシーンの方が年取った印象を受けるのが今ひとつ。

個人的には加藤剛の役回りが感慨深かったが、観客には何者かきちんと伝わっているのか気になった。年齢設定も今ひとつ分かりにくいかも。

最後にもう1995年が20年近く昔と描かれるんだな、というのが最も悲しい気持ちになった。

~10月25日・ギンレイホールにて~

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August 19, 2011

まほろ駅前多田便利軒

東京郊外のまほろ駅前に事務所を構える便利屋の話。大森立嗣監督作品。

便利屋の多田(瑛太)は、正月早々の仕事中に中学の同級生、行天(松田龍平)と出会い、依頼された仕事をこなしながら奇妙な同居生活を始める。

依頼された仕事はチワワの預かり、小学生の塾の送り迎えなどだが、いずれも一筋縄ではいかず、麻薬に絡んだ事件に巻き込まれていく。
その事件の中で、二人はお互いの結婚や子どもに関する過去を知り、分かり合っていく。

弁当屋(大森南朋)、バスの間引き運転を疑う依頼主(麿赤兒)、チワワを欲しがる売春婦(鈴木杏、片岡礼子)、麻薬の売人(松尾スズキ、高良健吾)、刑事(岸部一徳)、行天の元妻(本上まなみ)など、脇を固める役者がどれもはまり役。
中では鈴木杏が良い感じ。本上まなみは役にはすごく合っていたけれど、アップの顔が年齢を感じさせるもので個人的には悲しい気持ちになった。

構図としては二人の男性の同居ものという同性愛を暗示するものではあるのだけれど、二人とも髪がやたらと多く無精髭という外見的に似たタイプなのが今ひとつ。どちらか(できれば多田の方)をさっぱり系にした方がよかった気がする。

また、お互いの子どもに関するエピソードで分かり合うという設定は結構だが、多田の方の一方的な告白シーンはどうにかならなかったものか。
単に長回しで瑛太の長セリフと涙を撮りたかったのかもしれないが。そのせいで岸部一徳演じる刑事との絡み方が唐突な印象を受ける。

~8月17日・ギンレイホールにて~

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December 15, 2010

相棒 -劇場版Ⅱ- 警視庁占拠!特命係の1番長い夜

警視庁のお荷物コンビが大活躍する話。和泉聖治監督作品。人気ドラマシリーズからの映画化第2弾。

タイトルにある警視庁占拠事件を発端に、その事件の容疑者の動機は何なのか、を探っていく内に、警視庁幹部へ疑惑の目が向けられていく。

ドラマシリーズを見続けていれば、毎シーズン1度は描かれる警察組織や政治家の不正、犯罪、それを材料に行われる政治的な取引といった回が、CMで途切れることなくボリュームアップしているような印象を受けるだろう。

その意味では前回のように無理矢理マラソン大会というお金かかっていますよ的な映画にしているわけではなく、そのままドラマシリーズのスペシャルのように観られるのは、ドラマのファンとしては嬉しいところではないか。
逆に映画ならではの大きなスケール感などを期待していた向きには残念と思われるかもしれない。

事件の真相に迫る部分で言えば、冒頭にこの作品の重要人物が肩書付きで登場してきた時点で、役者の名前で概ね犯人が分かってしまうところもTVドラマ的と言えるだろう。
また、犯罪を立証する種明かしの部分も、それほど難しくなく、普通に観ていて分かってしまった。

ただ、試写会終了後に出口で配られた「秘密にして欲しい内容」に挙げられた2つの項目の内の1つは、このシリーズを見てきたファンにとっては確かに秘密にしておきたい衝撃的なものだった。

いま放映しているシーズン9を熱心に観ている人にとっては、この劇場版が時系列的にどう並んでいるかが割とすぐに分かるだろう。
それを踏まえると、秘密にしておきたい内容によって、シーズン9を観ていて漠然と抱いていた疑問が氷解する。
その意味でもドラマファン向けの作品と言えるだろう。

~12月8日・九段会館での試写会にて~

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May 01, 2010

ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-

前作で地球の危機を救ったゼブラーマンが15年後の世界で記憶を失った状態で目覚め、ゼブラシティと呼ばれるようになっていた東京を支配する恐怖政治と戦う話。宮藤官九郎脚本・三池崇史監督作品。

前半はゼブラシティの象徴となっているゼブラクィーン(仲里依紗)のプロモーションムービー状態。激しい音楽と映像とともに短いエピソードを重ねて舞台設定を説明している。

主人公・市川新市(哀川翔)がほぼ記憶を取り戻した後半から話は動き始め、敵対関係がはっきりしてくるとともに、前作の敵であるエイリアンも絡んでくる。

戦いの勝負といったものは容易に想像出来るだけに、そこにいたるまでの意外性というか小ネタというか、真剣に笑わせようとしているところが作品の肝と言えるだろう。

前作はまったくの素人の一般中年男性がヒーローになるという、文字にすると古臭くてどうにもならない設定を、チープな雰囲気のまま本気で作品にしてみたという清々しさのようなものがあったが、今回の作品には設定が15年後になっているため、そうした点に魅力を感じている人は期待しない方が良い。

また、基本的に前作の設定などは引き継いではいないが、登場人物など重なっているところは前作が好きだった人には楽しめるかもしれない。

~4月21日・よみうりホールでの試写会にて~

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January 13, 2010

南極料理人

極寒の地で一年を過ごす南極越冬隊の姿を帯同している調理担当の目から描いた作品。沖田修一脚本・監督作品。

南極ふじドーム基地は、昭和基地から約1,000㎞の内陸に位置し、平均気温はマイナス54℃、標高3,800メートルという外界から隔絶された場所にある。
そこに8人の越冬隊員が共同生活をして1年を過ごす。

ペンギンやアザラシはもちろん、細菌もウイルスも生存できない極寒の環境、冬は一日中明るく、夏は一日中太陽が昇らないという特殊な環境で苦労する人間たちの姿が描かれるが、基本的には隔絶された環境での共同生活もの。

共同生活のルールを守らないもの、特殊な環境を楽しむもの、残してきた家族に思いを募らせるもの、家族の思いを断ち切り仕事にいそしむもの、残してきた恋人との電話を毎晩楽しみにしているものなど、調理担当・西村(堺雅人)のエピソードが中心となってはいるものの、バランスよく展開される。

あまり予備知識を入れていなかったので、いつこの閉塞空間のために精神を病んでしまったり事件が起こったりするのだろうかと、割と最後の方まで緊張して観てしまった。

西村の家族も出てくるが、堺雅人の父親役というのは割と珍しいのではないか。新鮮な印象。
中盤では、生瀬勝久と堺雅人の長めのやりとりがあるが、どうにも「やさぐれパンダ」を思い出してしまった。
あと、徐々に隊員たちの髪の毛や髭が伸びていくのは面白かったが、罰として坊主にするエピソードもあったら良かったのではないか。現実にはできない理由もあるのかもしれないけれど。

~1月6日・ギンレイホールにて~

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May 25, 2008

相棒

警視庁のお荷物コンビが大活躍する話。和泉聖治監督作品。

人気ドラマシリーズからの映画化。映画で初めて観る人にも分かりやすいように、二人の置かれた立場は冒頭できちんと説明しており、出てくるキャラクターも厳選し、分かりにくい印象は少ない。

まったく別の事件と思われていたものがひとつの糸で結びついていき、そこに隠された大きな計画を阻止せんと奔走する警察の面々。
推理サスペンスの王道といえる展開は飽きさせることなく、アクションもドンパチをまったく出さずに緊迫感を与えるもので好感が持てる。

難を言えば、事件が解決してからが長いか。
ラストももう少し工夫というかひとひねりがあっても良かったかと。

~5月24日・丸の内TOEIにて~

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May 24, 2008

春よこい

逃亡犯である男を想う妻と子の話。三枝健起監督作品。試写会にて鑑賞。

借金取りに商売道具の釣り船を奪われそうになり、もみ合う中で相手を殺めてしまった男(時任三郎)がそのまま逃亡してから4年が経ち、妻(工藤夕貴)は周りの目を気にしながらも市場で働き、古い船で釣り船を営んでいる。

学校でいじめられている息子(小清水一揮)の担任(吹石一恵)から話を聞いた地元新聞社の記者である兄(西島秀俊)は、男を追い続ける刑事(宇崎竜童)や二人に接近し、ひとつの記事をしたためる。
その記事は、人々の記憶を呼び起こし、親子に思わぬ波紋を拡げていく。

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April 30, 2007

幸福な食卓

不安定な家庭に暮らす少女の中学3年生から高校1年生までのおよそ2年間を描いた青春もの。小松隆志監督作品。

主人公・佐和子(北乃きい)の家庭は、3年前の出来事がきっかけで兄(平岡祐太)は高校を首席卒業にも関わらず農業に従事し、母親(石田ゆり子)は家を出てパートをしながら一人暮らしをし、父親(羽場裕一)は仕事を辞め父親であることも辞めると宣言している。
それでいながら、殺伐とはしておらず微妙な距離感を保ちながら家族は明るく暮らしている。

佐和子が中学3年生になった新学期、クラスに大浦(勝地涼)が転校してくる。クラス委員として面倒を見る佐和子だったが、次第に大浦に惹かれてゆき、名門校・西高を目指しながらお互いの距離を不器用に近づけていく。

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March 19, 2007

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

九州から出てきて享楽的に生きる息子と、それを支える母親の話。松尾スズキ脚本、松岡錠司監督作品。

九州の炭坑町で育った主人公は、父親(小林薫)と別れて暮らす母親(若い頃:内田也哉子)に育てられるが、寂れていく町の中で外に出て行くことを早くから決意する。
主人公(大学生以降:オダギリジョー)は東京の大学に進むものの、母親からの仕送りを遊びに使い、1年余計にかかって卒業した後も、借金を重ねていく。
そんな中で祖母の死や母親(中年以降:樹木希林)の病気などを知り、主人公はがむしゃらに働くことを覚え、借金を返し、恋人(松たか子)もでき、いよいよ母親を東京に呼び寄せる。
東京での楽しく穏やかな日々は過ぎ、やがて母親の病は再び体をむしばみ始める。

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February 04, 2007

ゆれる

東京でカメラマンとして活躍する弟(オダギリジョー)と、実家で父親の跡を継ぐべくガソリンスタンドを切り盛りしている兄(香川照之)が母親の法事で久し振りに顔を合わせたことで巻き起こる出来事を描いた作品。西川美和脚本・監督作品。

同監督の長編デビュー作「蛇イチゴ」も葬式をひとつのきっかけにした兄妹のエピソードだった。
冒頭の法事の場での兄弟のやりとりや弟と父親(伊武雅刀)との確執を見たときには同様の家族ものだとばかり思っていた。
それは、兄の元で働いている幼馴染みの女性(真木よう子)が登場し、昔関係があったと思われる弟が再び関係を持つ展開となっても変わらなかった。
それだけに、翌日に3人でピクニックがてらに出かけた渓谷にかかる「ゆれる」吊り橋での出来事からの展開は良い意味でそれまでの予感を裏切ることとなった。

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