妊娠期間が3年に及んでしまったカップルの話。唯野未歩子監督作品。
主人公・冬子(中島知子)は妊娠9ヶ月。医者に言われたとおり、子供には純粋に生まれてきて欲しいとテレビや音楽に接することのない生活を送っている。
夫・徹(西島秀俊)は父親になる自覚のないまま、職場の女性と浮気をしている。冬子は夫の浮気を気付いているが、一時的なものと異に返さない。
妊娠18ヶ月。夫は浮気相手に振られ、いつまでも生まれてこない子供に苛立ち、本当に自分の子供か疑いの言葉を投げる。冬子は正直にこれまで付き合った相手のところに確かめに行く。
信頼を取り戻した二人だが、妹・緑子(奥田恵梨香)の付き合っている年の離れた恋人・海(塩見三省)の勤める大学病院に入院することで、世の中にスキャンダルとして取り上げられてしまう。
自分のために敢えてスキャンダルも受け入れたことを知った徹は、強引に冬子を連れ出す。
妊娠27ヶ月。山奥に隠れるかのように暮らす二人。
冬子の腹はさらに大きくなり、中で暴れる胎児により冬子は激しい痛みを伴うようになる。
その余りの巨大さに自然分娩は母体に危険と諭されるも、冬子はあえて自然分娩を選択する。
そして、陣痛が始まる...
珍しく原作を読んでから観た作品だったが、いくつかの設定も含めて内容は変わっており、新鮮に楽しむことはできた。
ただ、原作のような設定を説明するようなシーンがほとんどないため、初めて観る人にどれだけ伝わっているかは疑問。
原作に比べると、母親になる不安、父親になる不安、生まれてくる子供に対する責任、父親であることの不確かさ、出産における父親の無力感、そうしたものが混然としてよく表れていたように思えた。
そのために、とても現実的でないエキセントリックな設定でありながら、不思議と涙を誘われる。
主演の中島知子は、元よりあまり動かない役柄のため、さほど好演という印象はなかった。
西島秀俊は相変わらず「西島秀俊」な役柄だったが、ここ最近にしては表情豊かなシーンが多く、共演を重ねている監督ならではの引き出し方が表れているように感じられた。
西島秀俊ファン(という人がいるのかどうか知らないが)には堪えられない作品といえるだろう。
女優としての監督のファンであることはこれまでも公言しているし、それによって観た作品ではあるけれど、それを差し引いても、女流新人監督の第一作としては十分楽しめる作品と言えるだろう。
~2月18日・新宿武蔵野館~

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