August 19, 2008

中原 英臣: テレビじゃ言えない健康話のウソ

医学博士でテレビ番組のコメンテーターも務める筆者が一般に知られている健康情報の誤りを正していく本。

「健康診断で医学的根拠があるのは血圧、身長・体重、飲酒、禁煙、鬱病、糖負荷試験の6つだけ」「がん検診に効果なし」「超音波検診でみつかる病気は心配ない」など挑発的な見出しが並ぶ。

内容はそれぞれ、検診の限界とそれの伴う誤解、新しく判明した科学的要因も無視して継続される治療や検査といったものを紹介し、本当に役に立つもの、不必要なコストを強いられていることを説いていく。

目から鱗のトピックもあるけれど、タイトルから期待されるような具体的な健康情報番組の嘘やまやかしを暴露したり糾弾したりするような内容はほとんどない。

また、後半は医療制度、病院の選び方など、通り一遍の話題で失速感は否めない。

中原 英臣: テレビじゃ言えない健康話のウソ

中原 英臣: テレビじゃ言えない健康話のウソ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

August 14, 2008

小川 一水: フリーランチの時代

登場人物たちの心理描写に定評のあるSF中編が収められた作品集。

収められているのは5編。

表題の「フリーランチの時代」は火星でのエイリアンとの遭遇もの。
「Live me Me.」は事故で脳から身体への命令機能を失った女性が新たな体を取り戻す話。
「Slowlife in Starship」は宇宙に進出した時代に気楽に運び屋稼業を営む男性の話。
「千歳の坂も」は新たな技術の進歩により不老不死を手に入れた人類が生と死の選択を図ろうとする話。
「アルワラの潮の音」は、南海の島々を舞台にしたファンタジーもの。作者の「時砂の王」の外伝に当たる。

いずれも持ち味が充分に出ており、読み応えがある。
中ではやはり表題作がいちばん面白かったかな。

小川 一水: フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-8)

小川 一水: フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-8)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 31, 2008

島田 雅彦: 快楽のコンシェルジュ

島田雅彦が持っているTOKYO FMのラジオ番組「快楽のコンシェルジュ」でのトークを今日マチ子によりコミカライズしたもの。

小説やエッセイなどは読むけれど、ラジオ番組を聴くほどのファンではないので、トークを聞いたことはないが、いくつかのエッセイなどで紹介されているエピソードが多く、さほど新鮮さはない。

また、図らずもコミックエッセイという体裁になってはいるものの、味わい深いと言うにはちょっとつらい絵柄にもあまり思い入れすることはできなかった。

一応、各ページの欄外に著者の一言が突っ込みのように付け加えられている。

島田 雅彦: 快楽のコンシェルジュ

島田 雅彦: 快楽のコンシェルジュ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 30, 2008

夢枕 獏: キマイラ 3 菩薩変・如来変

その体の中に異形のものを飼っていることを感じ始める少年の話。1984年、1985年に文庫で刊行され、2001年の単行本化を経て、新書版となって刊行された第三巻。

文庫本2巻をまとめて一冊となっているが、ストーリーはさほど動かず。
主人公は東京の自由人たちの中で生活している最中に、ヤクザと関わる羽目になりキマイラ化してしまう。

周辺では雲斎が鬼骨を回すことに挑み、菊地は宇名月典善の弟子となり、埴輪道灌が雲斎の元を訪れる。

話が大きくなり、収拾が付かなくなっていくことを暗示させる巻。

夢枕 獏: キマイラ 3 菩薩変・如来変 (ソノラマノベルス)

夢枕 獏: キマイラ 3 菩薩変・如来変 (ソノラマノベルス)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 23, 2008

小川 一水: 妙なる技の乙女たち

近未来の赤道直下の島を舞台に働く女性たちの姿を描いた短編集。

カーボンナノチューブの工業生産法が確立されたことにより、宇宙へ出るための新しい手段として軌道エレベータが建設、その最初の建設地であるシンガポール沖リンガ島の2050年前後が舞台設定。

登場する女性たちの職業は、工業デザイナー、海上タクシーの艇長、リゾート開発系不動産会社社長、多国籍の乳幼児を抱える保育園の保育士、軌道エレベーターのキャビンアテンダント、工作機械を使った彫刻家、宇宙開発企業の企画担当。

いずれも周囲の反対や不十分な環境に抗いながら、自分の仕事を全うしていこうという女性たちの姿を力強く描いている。
その意味では、現代を舞台にしても良いような内容だが、まぁ、そこは作者の得意なところを舞台にしたということで、その良さはプラスの方向に出ている。

SF的な味付けも充分に出ていて、映像化も可能であれば楽しみになるような印象を受ける。

小川 一水: 妙なる技の乙女たち

小川 一水: 妙なる技の乙女たち

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 19, 2008

川西 蘭: 坊主のぼやき

もの書きから浄土真宗の僧侶になった作者自身に関するエッセイ。

個人的には作者が18歳の時に書かれたデビュー作からほぼリアルタイムに作品を読み続け、90年代後半からぱったりと作品を見なくなっていたため、まさかこんな状況になっていたとは、という驚きと共に読まざるを得なかった。

内容は、40歳前にして僧侶を目指し、得度も受けた著者の苦労話や、一般に思われているであろう坊主の印象と現実を面白く描いている。
小説では透明感溢れると称された文体はそのままエッセイでは読みやすく分かりやすいものとなっている。

いささか過剰とも思える正座のつらさに関する記述も、繰り返し繰り返し出てきても嫌味な感じがせず、読み疲れることはない。
宗派の違いこそあれ、単純に僧侶の生活や葬式のしきたりを確認するだけでも面白くは読めるだろう。
最後の章には、泣かせどころもあり、サービスも忘れていない。

あと、個人的には「~ではありませんか? ありませんか。そうですか。」という形式の文末があまり好きではないのでちょっと鼻についた。

川西 蘭: 坊主のぼやき

川西 蘭: 坊主のぼやき

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 07, 2008

夢枕 獏: キマイラ 2 飢狼変・魔王変

その体の中に異形のものを飼っていることを感じ始める少年の話。1982年に文庫で刊行され、単行本化を経て、新書版となって刊行された第二巻。

文庫本にして2巻分を1冊にまとめているが、前半では主人公の大鳳吼はほとんど登場せず、九十九三蔵が主人公のように振る舞い、舞台も東京・新宿、台湾にまで拡大し、これから展開するストーリーの地固めといった印象。

後半は徐々にストーリーが動き出すが、それはジュブナイルとはおおよそ思えないようなヒロインの過酷な運命を遠慮なく描き出している。

ところで、一箇所誤植を見つけたが、単行本と比較しても相違があった。単なる印刷し直しなのにどこで相違が生じるのか、本の作り方として興味深い。

夢枕 獏: キマイラ 2 飢狼変・魔王変 (ソノラマノベルス)

夢枕 獏: キマイラ 2 飢狼変・魔王変 (ソノラマノベルス)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 01, 2008

夢枕 獏: キマイラ 1 幻獣少年・朧変

その体の中に異形のものを飼っていることを感じ始める少年の話。1982年に文庫で刊行され、単行本化を経て、新書版となって刊行された第一巻。

単行本化の際に購入して読んではいるが、改めて読み直しても面白く感じるところはさすが。

いじめられっ子の美形の少年が小田原の高校で出会った先輩、拳法などを通して、自分の中にいるものを感じ、力を徐々に表に出していく。

ジュブナイルとして刊行されたとはいえ、青臭く遠慮した部分も感じられず、今でも充分に読み応えがある。
新書版となるに当たって加筆・訂正をしていると言うが、果たして?

この巻では、文庫2巻をまとめ、主人公が丹沢山系の修行の中で異形への変貌を見せるところまで。

夢枕 獏: キマイラ 1 幻獣少年・朧変 (ソノラマノベルス)

夢枕 獏: キマイラ 1 幻獣少年・朧変 (ソノラマノベルス)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 30, 2008

菊地 秀行: 魔界都市ブルース 妖婚宮

著者のモチーフである魔界都市<新宿>シリーズの中で、人捜し屋・秋せつらが活躍する話。

今回は婚約者の元から逃げた御曹司を捜し求める話。
婚約者の出自が北の国で、その親や先祖も含めて魔形の一族であることから敵対していく。

最近の作品にしては敵対関係が分かりやすいが、次々に強敵を出す割に倒されるところが呆気ないという欠点は相変わらず。
そのため主人公も段々引き立たなくなっているところが難点。

菊地 秀行: 魔界都市ブルース 妖婚宮 (ノン・ノベル 849 魔界都市ブルース) (ノン・ノベル 849 魔界都市ブルース)

菊地 秀行: 魔界都市ブルース 妖婚宮 (ノン・ノベル 849 魔界都市ブルース) (ノン・ノベル 849 魔界都市ブルース)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

May 22, 2008

島田 雅彦: 不惑の手習い

40歳を過ぎた小説家である筆者が、各界の一流どころに師事する模様を描いたエッセイ。

師事するのは、二胡、書道、カクテル、礼法、フィギュア、トランポリンなど20種類。

手習いとは言っても、40歳を過ぎているため道を究めるのではなく、格好だけ付けばよい。さらに言えば、ちょっとそれらしくしてもてるネタになればよいと言う割り切り方が気持ちよい。

それでも、短い時間の体験を描いた、やはり短い文章の中で、その道の奥深さや面白さが見事に伝わってくるのはさすが。

不惑を目の前にすると、こうした手習いも面白いなと思いつつ、けれどこの本の一流どころはいずれも直弟子は取らないという。
それがとても羨ましかったりする。

島田 雅彦: 不惑の手習い

| | Comments (0) | TrackBack (0)

May 21, 2008

夢枕 獏: 遥かなる巨神―夢枕獏最初期幻想SF傑作集

夢枕獏の初期短編集。

SFありファンタジーありアクションありと、ジャンルはバラエティに富んでおり、今に至る力強い筆致というものが既に感じられる。

一度は読んだ作品ばかりのはずなのに、新鮮に感じるのは作品の力か自らの記憶力のなさか。

夢枕 獏: 遥かなる巨神―夢枕獏最初期幻想SF傑作集 (創元SF文庫 ゆ 1-1)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 23, 2008

菊地 秀行: 邪神迷宮

著者のモチーフである魔界都市<新宿>シリーズの中で、ナンバーワンガイド外道棒八が活躍する話。

クトゥルー神話を全編に渡って取り上げており、新宿に出没しようとしている邪神クトゥルーと、それを阻止せんとする主人公たちとの戦いを描いている。

クトゥルー神話を知らなくても充分に楽しめるとはとても言えず、抽象的な存在であるだけに描写が少なく、その重要な相手に迫力を感じられない。

好きならば、まぁ、という程度。

菊地 秀行: 邪神迷宮 (ジョイ・ノベルス)

菊地 秀行: 邪神迷宮 (ジョイ・ノベルス)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 10, 2008

あさの あつこ他: Field,Wind―青春スポーツ小説アンソロジー

6人の作家によるアスリートを主人公とした書き下ろしの短編を集めたアンソロジー。

あさのあつこ『ロード』:妻を亡くした元陸上選手の回想。ふたりの出会いが中心でスポーツシーンは少ない。

川島誠『サッカーしてたい』:養護施設に入れられたサッカー好きな双子の兄弟の話。ふたりの独り言が交互に章立てになっているなど独自性も目立ち、試合のシーンもそれなりに緊迫感が感じられる。

川西蘭『風を運ぶ人』:実業団自転車部のジュニアチームに所属する高校生ロードレーサーの話。同作者の作品である『セカンド・ウインド』からのスピンアウト作品となっている。

須藤靖貴『氷傑』:実業団アイスホッケーチームに所属するゴーリーの話。巻きこまれたトラブルと解雇通知から身の振り方を考えるまで。恋人との関係などもう少し深みがあっても良かった。

五十嵐貴久『バトン』:陸上部に所属する女子高校生の話。リレーで出場する高校最後の大会を前に、恋人であるメンバーとの間で起きるトラブルを描く。ストーリーは予定調和でちょっと厳しさのない甘い印象。

小手鞠るい『ガラスの靴を脱いで』:想いを寄せるパートナーとの別れをきっかけに引退を考えたフィギュアスケーターがニューヨーク旅行を通して行く末を探し出す話。自分探しの旅というシチュエーションもさることながら、スポーツシーンがまったく出て来ないのは考えもの。

個人的には川西蘭の作品を目当てに買った本だったが、分量的にも質的にも川西蘭の作品が抜けている印象を受けた。
スポーツの描写は確かだし、レースシーンは緊迫感もあり、それでいて選手のプライベートな出来事も読ませる。
早く『セカンド・ウインド』の続編が読みたくなる。

あさの あつこ: Field,Wind―青春スポーツ小説アンソロジー

あさの あつこ他: Field,Wind―青春スポーツ小説アンソロジー

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 08, 2008

菊地 秀行: 騙し屋ジョニー 魔界都市〈新宿〉

作者の代表的なモチーフである魔界都市<新宿>を舞台にしたストーリーの中で十六夜京也を主人公とした、もっとも根源となるシリーズの新作。

十六夜京也が主人公のシリーズはジュブナイルとして刊行され、SF的な要素も強く、設定にも期待がかかる。

が、しかし、これまでの敵と比べると、いささか力不足は否めない。
そもそも、タイトルの「騙し屋ジョニー」が敵かどうかも怪しい。
そのために、十六夜京也が引き立っていないのだ。

ラストもうまくまとまってはいるが、ご都合主義とも取れる。

菊地 秀行: 騙し屋ジョニー 魔界都市〈新宿〉 (ソノラマノベルス) (ソノラマノベルス)

菊地 秀行: 騙し屋ジョニー 魔界都市〈新宿〉 (ソノラマノベルス) (ソノラマノベルス)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 04, 2008

菊地 秀行: D-魔道衆 吸血鬼ハンター19

吸血鬼ハンターDシリーズ第19弾。

ゼノ一族が長い眠りから覚め、標的となった村はハンターを雇い抵抗を示す。
村長の娘は「都」から戻る途中でゼノ一族と遭遇、通りかかったDに救われる。
Dを雇おうとする村長の娘だったが、Dの標的は巨大列車を復活させたドラゴ大公だった。

ゼノ一族、村に雇われたハンター、村長の娘、ゆきずりの少年、ドラゴ大公の一味、そしてDと、敵対関係がひとつでなく、複数が入り組んでいるため分かりにくいことこの上ない。

特に物語の後半、巨大列車の中に入ってからは、前半のキャラクターがしばらく出て来ないなど、別の物語になっているようで、登場人物を追って行きにくい。

残りページが少なくなっても、いつまでも終わりそうにないストーリーは続刊を予感させたが、一応の完結。
そのあっけなさもオチとしては弱い印象を受ける。

菊地 秀行: D-魔道衆 吸血鬼ハンター19

菊地 秀行: D-魔道衆 吸血鬼ハンター19

| | Comments (0) | TrackBack (0)

March 13, 2008

菊地 秀行: 幽王伝-陸奥剣鬼連合

江戸時代を舞台に、剛剣を扱う男の活躍を描いた作品の完結編。

東北の藩を舞台に、謎の流派「冥府流」を将軍家指南役にして世間に広めようとする一派と、それに抗う勢力との戦いが描かれる。

しかしながら、その関係性がよく分からないのに加え、登場人物がその役割をくるくると変え、しかも分身まで何人も現れると来ては、何がストーリーの本筋か把握するのは困難。
柳生十兵衛や服部半蔵など有名人?を登場させてもうまく使えているとは思えない。

ひたすら読むのに時間がかかった。

菊地 秀行: 幽王伝-陸奥剣鬼連合 (ハルキノベルス き 2-3)

菊地 秀行: 幽王伝-陸奥剣鬼連合 (ハルキノベルス き 2-3)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

March 07, 2008

岡留 安則: TVウワサの眞相

惜しまれつつ休刊した雑誌「噂の真相」の編集長である岡留安則がコメンテーターを務めた朝日ニュースターの同名番組のトークをまとめたもの。

政治とカネ、IT業界、風俗業界、ジャーナリズム、芸能界、日本外交などのテーマに各界の論客がトークをかわす構成。

テレビの地上波では決して放映されなくなった骨太な内容ではあるけれど、ここで暴露されたようなスクープネタがあるわけではない。
それも今読むとそう感じるのであって、放送当時では斬新な情報であったかもしれない。
その意味では、トーク内容が現実になっているという側面もあるのかもしれない。

なんにせよ、活字になってしまうと内容はどんどん古くさくなってしまうことは避けられず、その影響力も次第に小さくなってしまう。
インターネットでも良いから、こうした番組がリアルタイムに提供されるような健全さが欲しいとつくづく思う。

岡留 安則: TVウワサの眞相

岡留 安則: TVウワサの眞相

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 18, 2008

春日 武彦: 問題は、躁なんです 正常と異常のあいだ

精神科医の著者による躁病もしくは躁的な行動についてまとめた本。

「躁鬱」などと呼ばれて知っている人は少なくないものの、「鬱病」が病気としての認知と理解が進んできたのに対し、「躁病」についての理解や認識が進んでいるとは言い難い。
一般的な認識としては、「暗くなって自殺してしまうかもしれない」鬱病に対して、躁病は「明るくて大らか」くらいではないだろうか。
著者はそうした一般的な認識を意識しながら、病としてはより深刻な躁病について啓発する意図が読み取れる。

人は誰しも不安に思ったり、自信を失ったりすることがある。
躁病はそうした感情がまったくない状態であり、それゆえに相手がどう思っているかも考えずに話しまくり、あとさき考えずに高額な買い物をし、性的にも恥じらいなく露骨な表現で露わにする。
地道な努力をすることはなく、壮大なアイディアに心酔し実際に行動に移すが、飽きっぽく完遂することはない。
そのために失う信用や経済的損失の点で鬱病よりやっかいであるとしている。

著者は鬱病が「心が風邪をひく」という表現になぞらえて、躁病を「心が脱臼する」と表現し、読者に分かりやすい事例としていくつかの有名人のエピソードや事件を紹介しながら、そこに潜む躁病的な気質というものを挙げていく。

躁病という病について理解が進めば、そうした不可解な事件に至る動機についても理解が進むだろうという指摘は興味深い。
人が鬱病的気質を誰しも持っているとするならば、躁病的な気質も誰しも持っているとはいえ、それと病との間にはやはり大きな隔たりがあり、そうした人の精神構造の突出した部分を知っておくにはよい本。

春日 武彦: 問題は、躁なんです   正常と異常のあいだ (光文社新書)

春日 武彦: 問題は、躁なんです 正常と異常のあいだ (光文社新書)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 15, 2008

浦和レッズ・オフィシャル・イヤーブック 2007

サッカーJリーグの浦和レッドダイヤモンズの2007年シーズンをまとめた公式本。

本とはいえ、大胆に大きな写真を使っており、クラブワールドカップ、そこへつながるアジアチャンピオンズリーグの戦いの様子を中心にまとめられている。

写真集のような構成で、ほとんどの試合を観戦した者からすれば思い出深いものだが、収められたキャプションも補足程度であり、初めて観るものに感動を伝えるには物足りない。

また、ページ内での写真の順番も左から右へとなっており、本の開き方からすると見難いところもある。
せっかく将来に渡って残るような実績を残したのだから、それを収める本にもそれなりの力を入れてほしかった。

: 浦和レッズ・オフィシャル・イヤーブック 2007 (2007)

浦和レッズ・オフィシャル・イヤーブック 2007 (2007)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 14, 2008

吉野 朔実: シネコン111―吉野朔実のシネマガイド

マンガ家の著者による映画評をまとめた本。

2003年から2007年にかけて各誌に掲載された111本の作品を見開きで直筆のイラストと共に紹介している。

作品はマイナーなものも多いけれど、ハリウッド作品もいくつかある。
日本映画好きとしては期待したいところだけれど、それほど多くはなく、ヨーロッパやアジアの作品が目立つ。

結局、観たことがある作品はひとつ(『ゆれる』)しかなかったのだけれど、あまり趣味とはしていない海外作品でも観てみたいと思わせる文章は、長すぎも短すぎもせず、うまくまとめられている。

紹介されている日本映画はDVDは買ったものの、まだ観ていないものがほとんど...
これをなんとかせねば。

吉野 朔実: シネコン111―吉野朔実のシネマガイド

吉野 朔実: シネコン111―吉野朔実のシネマガイド

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 26, 2008

サポティスタ: サッカー馬鹿につける薬

サッカー情報サイトの管理人によるサッカーに関するコラム集。

雑誌「TVブロス」「ヤングチャンピオン」に2002年10月から2007年10月までに掲載されたものをまとめたもの。

そのため、ジーコジャパンからオシムジャパンまでの日本代表、Jリーグ、フットサルまでサッカー界周辺の話題を忌憚のない意見でまとめている。
一般雑誌に掲載されたため、スポーツ雑誌のようにサッカー協会の検閲がなかった、というのは著者の言葉だが、コラムの対象は選手や監督などピッチの中よりは、サッカー協会やスポーツマスコミにも厳しく向けられている。

強化なのか興行なのか、それを取り上げるマスコミとサポーターとの乖離など、話題が最近なものだけあって、記憶も定かで面白く読める。
またマスコミが大きく取り上げなかったサポーターのトラブルなども、きちんと冷静な視点で取り上げている。

Jリーグ開幕時がバブルだったことは、多くの人の共通認識だろうが、2002年W杯はサッカー界のバブルであり、その崩壊が2006年だった。
その間、サポーターは興行優先の日本代表から地元のJリーグに興味の対象は移っており、バブルの崩壊にもめげずに集客は伸びており、浦和レッズというひとつの成功例を生み出した。
けれど、多くのマスメディアはその流れについてこれず、サッカー専門紙の発行やネットメディアがサポーターのしっかりとした支持を受けている。

こうした一連の経緯がサポーター目線で追っていける本。

サポティスタ: サッカー馬鹿につける薬

サポティスタ: サッカー馬鹿につける薬

| | Comments (0) | TrackBack (1)

January 09, 2008

ウェンディー・ノースカット: ダーウィン・アワード 死ぬかと思ったインターナショナル

間抜けな行為によって命を落としたり落としかけたりした人たちのエピソードを集めた本。

スタンフォード大学のWebサイトの中に設けられた人気コーナーを独立させたものの書籍化となる。
しばらく前から人気Webサイトの書籍化が相次いでいるが、あまり読んでいない。
それは、多分にWebサイトで読むときの臨場感が面白いのであって、あとからうまく編集されたものでは、そのリアルタイム感が削がれているように思えるからだ。

ただ、海外サイトに関しては話は別だ。
言語の大きな壁もあるし、その国で有名なTV番組やTV出演者に関する笑いは受け止めようがない。
そうした笑いのツボまできちんと解説が入っているような書籍化は意義があると考える。

というわけで、この本にもいくつか脱力系のエピソードが収められている。
多くが人の死にまつわるものなワケだけれど、不謹慎にも笑えるところが絶妙。
翻訳の仕方も雰囲気を損なわず、上手にまとめられている。

また、エピソードの真偽のほどもフォローされている丁寧な作りはアメリカのWebサイトという感じがする。
ただ唯一、受賞者に対する評において、間抜けの遺伝子を後生に引き継がなかった、という言い回しが多く出てくるが、遺伝子と進化について誤解を生みそうな表現であるとは感じた。
もっとも、そうした誤解を踏まえたパロディとしての表現なのだろうけれど。

ちなみに、帯には2007年末に公開された映画「ダーウィン・アワード」の原作本となってはいるが、映画の方はこれらのエピソードをベースにしたドラマ仕立てになっているはず(映画も未見)なので、本書には映画の主人公は登場しない。

さらに「死ぬかと思ったインターナショナル」というサブタイトルにしても、「死ぬかと思った」の著者自らがあとがきに寄せて、本当に死んでいるのだから「死ぬかと思った」ではないし、と指摘しているので注意が必要だ。

ウェンディー・ノースカット: ダーウィン・アワード 死ぬかと思ったインターナショナル

ウェンディー・ノースカット: ダーウィン・アワード 死ぬかと思ったインターナショナル

| | Comments (0) | TrackBack (0)

December 18, 2007

近藤 史恵: サクリファイス

日本国内で自転車ロードレースチームで戦う若手選手の話。

川西蘭の「セカンドウインド」からの流れで読んでみた。

主人公は2年目の若手選手。高校まで陸上競技で好記録を出していたが、個人競技ならではのプレッシャーが嫌になり、エースとアシストという役割分担がある自転車競技に転身する。

この実は団体競技である自転車ロードレースの役割分担に焦点を当てて、決してエースを望まない主人公の性格をあぶり出していくところはうまい。
さらに、ツール・ド・ジャポンという大会を通して、スプリントと山岳コースという異なる競技と言っても良い自転車レースの特徴とチーム内の選手の性格付けとリンクさせ、チーム内の人間関係を描いていく。

こうした手法は確かにうまいが、すでにコミックでは「シャカリキ!」や「オーバードライブ」で実現されているため、そうした作品を読んだ者には決して目新しさは感じないし、その迫力には欠ける面も否めない。

ツール・ド・ジャポンで好成績を収めたチームは主人公も含む若手を交えてヨーロッパ遠征に挑む。
若手の海外移籍という話も出てくる中、主人公の前に元恋人が取材者として現れ、心かき乱す情報を与える。

この辺の本番前のアスリートに対する無神経なやり取りはちょっと現実感を欠く。

そして、レース中に惨劇は起きる。

その哀しみに立ち向かうアスリートたちを描いていくのかと思いきや、最終章は思いがけない展開を見せる。なんと、主人公が惨劇に隠された謎解きを始めるのだ。

あまりに少ない物的証拠と、関係者の証言から導き出した無理矢理とも言える主人公の推理は、けれど、バシバシ的中し、またいくつもの哀しみをあぶり出していく。

正直、この展開は不要だと感じた。
最後の結論も、あまりに登場人物たちの想いを純粋に美化しすぎている嫌いがあって、何とも後味が悪い。
それは、主人公によって語られる、登場人物たちのその後のエピローグにも表れている。

所詮、目先を変えた推理ものというところだろうか。
スポーツものとして読むとあまり良い気はしない。

近藤 史恵: サクリファイス

近藤 史恵: サクリファイス

| | Comments (0) | TrackBack (0)

December 10, 2007

川西 蘭: セカンドウィンド 1

自転車ロードレースに挑む少年の話。二部構成。

主人公・溝口洋は中学三年生、自分の住む村の山道を自転車で走るのが好きだったが、思い立って町のロードレースに出場する。
そこではロードレーサーに乗った経験豊かな同年代の選手が多く参加していたが、シティバイクで最高位を得た洋は、町の中心企業である南雲デンキの自転車部のジュニアクラブに誘われる。
そこで練習生として練習を重ねながら、周りのメンバーやメンバー入りを目指す練習生たちの姿を見ながら、自分の自転車に対する想いを見つめ直していくのが第1部。

第2部では夏休みを前に自転車を降りた洋が、再び自転車を乗るようになり、田村岳という新しい相棒を得て、ヒルクライムを重ねながら、再びレースに出場しようとするまでを描いている。

作者のファンとしては待ちに待ったほぼ十年振りの新作は、真っ当な青春スポーツ小説だった。
自転車競技というマイナーなスポーツを丹念に描き、その厳しさや熱さといったものを作者の持ち味で描き出していく。

正直、自転車競技に興味のない向きには難しい描写もあるかもしれない。
個人的にはコミックで「シャカリキ!」を読んでロードレーサーを買って乗ったり、最近では同じく「オーバードライブ」という作品を読むことによって自転車競技に対する基礎知識を得ていたことが助けになったとも思える。

それらコミック作品と比べると、主人公が何かに秀でた天才でなく、周りから心配されるほどのダメキャラでないところが、真っ当な青春小説として評価したいところだ。
こうした小説を読む機会のある普通の少年が共感を得られるような当たり前の感情とちょっとだけ秀でた才能を主人公は持っている。

競技の描写も細やかで、登場人物も友人、幼馴染み、ライバル、後輩と混乱しない程度に充実している。
二部構成ながら、タイトルに1と付くように、二部の最後は続きの期待させる引きとなっている。

このままコミカライズや映像化も予感させるような出来に仕上がっているが、あまり中途半端な出来にはしてもらいたくない。
そんな気にさせるような作品。

川西 蘭: セカンドウィンド 1 (1) (ピュアフル文庫 か 2-2)

川西 蘭: セカンドウィンド 1 (1) (ピュアフル文庫 か 2-2)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

December 03, 2007

MICHELIN GUIDE東京 2008

フランス・タイヤメーカーによる料理店・ホテルガイドの東京版。

東京版の発行は初めてということで話題になり、発売初日に売り切れの書店が多かったが、意外にも売れ残っていた店があったので購入。

ニュースなどでは三つ星などと星の数が話題になるが、ガイドの見方を読むと、星の数は「料理の美味さ」を表しているが、もうひとつ尺度があることに気付く。
それは「快適度」を表すもので、「適度な快適さ」から「豪華で最高級」まで5段階、アイコンを赤/黒で使い分ける(赤の方が上)ことで10段階で評価している。

その二つの尺度で見ると、ニュースなどで紹介されていた三つ星の鮨屋も快適度は最低ランクだったりしており、特に比例していないことが分かる。

もっとも、料理の味でも言われるように、快適度も何を持って快適とするのかは議論があろう。
ただ、このガイドがあくまで外国人が日本に観光に来るためのガイドとするならば、注文や質問など店のスタッフとの会話も含めて外国人が快適に食事ができるか否かを示しているとすれば、一定の理解はできよう。

その意味では、海外からの客人を食事に連れて行くときの参考にはなるだろう。
まぁ、そんな機会はないだろうし、5桁の食事代はなかなか縁がなさそうではある。

: MICHELIN GUIDE東京 2008 (2008)

MICHELIN GUIDE東京 2008 (2008)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 27, 2007

小川 一水: 時砂の王

時空を越えて謎の侵略者ETと戦う人類を描いたSF作品。

謎の存在から侵略を受けた人類は太陽系の果てに追いやられてしまう。
ようやく反撃の糸口を見出した人類だったが、謎の存在ETは時間を過去に遡り、過去の人類へ攻撃を仕掛けようと時を越えた。
人類は知性体を作り出し、ETを殲滅し、人類を救うべく過去へ向かわせる。

主要な舞台を邪馬台国に設定し、卑弥呼の前に未来から知性体が現れるところから物語が始まる。
ETの存在、それに抗う知性体の存在により歪められる歴史は、偽史もののようでも、仮想戦記物としても読める。

ETの側にも時を越える際に兵器などの物量を持ち込ませず、その時代で物資を調達しなければならない設定を持ち込んだ点が、戦いを拮抗したものとしている。
また、時間を遡り歴史を書き換えることによるタイムパラドックスも時間枝という考え方で人類が滅亡する枝と判断された時点でもっと根本に近い枝の分岐に移るという戦術もSF的な禁じ手を逆手に取るようで面白い。

主要な舞台を設定しながら、章ごとに他の時代を飛び回るストーリー展開もスリルがあり、ラストに至るまで面白く読める。
ただ、難を言えば最後の数行は少々ロマンチシズムをはき違えているような印象も受ける。

小川 一水: 時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-7)

小川 一水: 時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-7)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

October 25, 2007

阿曽山大噴火: 被告人、前へ。―法廷で初めて話せることもある

裁判傍聴を生業とする著者による傍聴記。日刊スポーツのサイトで連載されていたものをまとめたもの。

サイトの連載はずっと読んでいたので、ほとんど覚えている内容。
違うのは被告人が匿名になっていることくらい。

まとめて読み返して改めて気付かされるのは、著者があとがきで述べているように、事件当時の報道と裁判での冒頭陳述に違いがあること。
冒頭陳述も検察の主張であって、真実とは限らないのだけれど、事件当初の警察発表を元にした(と思われる)報道との違いがあるということは見逃せないところ。

報道のあり方は度々問題になるが、こうした事件報道と裁判の冒頭陳述を並べるだけでも良いのではないか。
そんなWebサイトがあれば影響力あるような気がするが。

阿曽山大噴火: 被告人、前へ。―法廷で初めて話せることもある

阿曽山大噴火: 被告人、前へ。―法廷で初めて話せることもある

| | Comments (0) | TrackBack (0)

October 20, 2007

唯野未歩子 : 「17才」

17歳の少女が母親の服装をしてライブハウスに潜り込む様子を描いた短編。小説現代2007年10月号収録。

インディーズロックのアーティストJOYを巡る女たちを異なる作家が毎月綴っていくという特別企画の第3弾として書かれたもの。

芸能事務所を経営するシングルマザーの母親の元で所属タレントをしている菊子は、エキストラとして参加していた撮影所で知り合ったスナオくんと付き合い始め、彼が興味を持っていた80年代の文化・風俗に触れていく。
その時期を謳歌していた母親のことを想い、父親を意識していく中で、その頃に活動していたアーティストJOYのライブが開催されると聞き、高円寺のライブハウスに潜り込む。

彼が興味を持っている80年代の文化・風俗を知るにつれ、今では違和感どころか笑い話にしか感じられない現在の17才の感覚を細かく描き出している。
対象はファッションだったり、雑誌だったり、音楽だったり、セックスの位置付けも含めた男女の恋愛事情だったりする。

80年代を身近に覚えている年代からすれば、それをリアルに感じられない17才の感覚はとても信じられないというのが正直なところで、それは作者のフィクションかもしれないけれど、それが一番印象深く、また読みにくさ、感情移入のしにくさにつながっている。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

October 17, 2007

菊地 秀行: ラビリンス・ドール―魔界都市迷宮録

魔界都市<新宿>を舞台にした著者一連のシリーズに登場してきた人形娘を主人公にした短編集。

高田馬場の魔道師トンブ・ヌーレンブルグの元で暮らす人形娘はマンサーチャーシリーズで登場して以降、多くの作品に登場してきた。
そうした存在を主人公にしたためキャラクターは完成しており、既存のファンには違和感なく読める。

キャラクターとしては理性的な存在のため破天荒さはないが、その分わかりやすいストーリーも悪くない。

菊地 秀行: ラビリンス・ドール―魔界都市迷宮録 (ノン・ノベル 837)

菊地 秀行: ラビリンス・ドール―魔界都市迷宮録 (ノン・ノベル 837)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

October 11, 2007

よしなが ふみ: よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

マンガ家・よしながふみが同業者を始めとしたマンガ好きとのマンガについての対談を集めた本。

その魅力的かつ豪華な対談相手は、やまだないと、福田里香、三浦しをん、こだか和麻、羽海野チカ、志村貴子、萩尾望都。

話す内容は自然とマンガについて。子供の頃に読んだ作品から自分たちに関わる作品まで。

その中でも興味深いのは、BLというジャンルについて大きくスペースを割き、現状が如何に理解されていないか、理解されないことでどう認識されているのか、それを打破するために何をすればいいのか、ということ。

そのための方法論や言葉を重ねて効果的なアピール方法について議論を重ねていく。
そこにはフェミニズムの捉え方、その言葉の使い方も含まれる。

個人的にはよしながふみの作品も読み、このジャンルにも理解ある方だと考えていたが、まだまだ奥深いものだと、そして女性たちがそこに何を求めて読んでいるのか、初めて知ったことも少なくなかった。

ひたすら慧眼と感じた本。
これを参考にBLもいくつか読んでみたいと思わずにいられない。

よしなが ふみ: よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

よしなが ふみ: よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

| | Comments (0) | TrackBack (0)

October 10, 2007

夢枕 獏: 怪男児―出雲あやめ18歳純情にして凶暴

大きな体躯を持った少年が淫魔邪教と戦う羽目になる話。判型を変えての再発売だが以前のものを持っていなかったので購入。

187cm、132kgの体躯をもった18歳の少年・出雲あやめは、『智恵子抄』を片手にいつか女性と結ばれる日のことを夢見ている。
大学で憧れた女性が怪しげな宗教に参加していることを知り、対決姿勢を強めていく。

文学好きの面では相対する形で中原中也や宮沢賢治の一節も登場し、邪教の方では獣姦シーンも登場するなど、読みどころは十分。

その一方で、アクションシーンでは主人公が特定の格闘技を扱うわけでもなく、体躯を生かしただけである点、そもそもその体躯がどのように出来上がったというところの描写がないところは物足りない。

また、対する邪教も主人公の周りをうろちょろするばかりで、どれだけ大きなものか、社会的に影響力を持っているかの描写がなく薄っぺらく見えてしまう。
もっとも、この点はストーリーのラストで言い訳めいた結論を付けているので良しとできる。

いずれにせよ、面白いキャラクターなので是非続編もしくは別の作品に登場させて欲しいもの。

夢枕 獏: 怪男児―出雲あやめ18歳純情にして凶暴 (Excel Novels)