December 21, 2013

小川一水: 臨機巧緻のディープ・ブルー

太陽系外の星系の知的生命体と地球人類との邂逅を描いた作品。

すでに銀河系に進出している時代の地球人類はすでにいくつもの知的生命体と接触しており、そのたびに友好か敵対か判断を迫られ、さらに自分たちの目的を伝えなければならない。
そうした役割を担った艦隊に報道カメラマンとして登場した主人公は素人丸出しの行動で周りをやきもきさせながらも、新たに着陸した惑星での大胆な行動が艦隊の運命を左右することになる。

異星人の描写は鳥類や魚類をベースにしているなど古典的でコミカルな印象も受けるが、そこに著者が得意な細かな設定と丁寧な描写が加わることで新たな面白さを醸し出している。
特に人類が他の星系に乗り出す目的や意義を説明するくだりは興味深いものだった。

小川一水: 臨機巧緻のディープ・ブルー (朝日ノベルズ)

小川一水: 臨機巧緻のディープ・ブルー (朝日ノベルズ)

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April 17, 2013

村上 春樹: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

36歳のエンジニアが年上の恋人に促されて絶縁していた高校時代の親友たちに会いに行く話。

ストーリーとしては上の1文ですべてを言い尽くしているくらいのシンプルなもの。それ以上でもそれ以下でもない。
これまでの作品に比べれば、ポルノ成分もファンタジー成分も少なめで、文章も読みやすい。

個人的に気になっていたのは、携帯電話やインターネットが存在する世界を描くか否かだったが、結果として舞台は現代となっており、携帯電話もインターネットも存在する。
ただ、それらをもっぱら活用しているのは恋人であり、主人公は一般レベル。さらにそれらが存在しない(一般的になっていない)時代の昔話が多く語られる。

もしかすると続編を求める向きもあるかと思うが、逆に最後の1章はいらないように感じた。
続編ではなく同じレベルの読みやすい中編をもう少し短い間隔で書いてくれればと思うのは出版社の論理だろうか。

村上 春樹: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上 春樹: 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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March 31, 2013

夢枕獏: 宿神 第一巻

平安時代の京都を舞台に、歌と武芸に秀でた佐藤義清が親友の平清盛とともに不思議な体験をする話。

昨年の大河ドラマ「平清盛」を割とちゃんと観ていたので、ある程度の人物名と関係が分かっていたのが幸いした。
ただ、時代はドラマよりやや古く、源渡、遠藤盛遠の逸話なども入っている。
この辺はドロドロしていて面白く、これを大河ドラマにしたほうが良かったのではないかとも思ったが、さすがのNHKでも難しいかもしれない。
あとで知ったのだが、この辺は人形劇でやったことがあるようだ。

なかなか面白く、次巻以降も期待したいが、蹴鞠のシーンだけは技の名前の羅列でどんなにスゴイことか伝わりづらいのが欠点。

夢枕獏: 宿神 第一巻

夢枕獏: 宿神 第一巻

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March 30, 2013

小川一水: 天冥の標 6 宿怨 PART3

全10巻と予告されているSF大作シリーズの第8弾。

この巻では引き続き西暦2500年前後の救世軍が太陽系全域に対して宣戦布告し、《酸素いらず》の一派とともに地球に攻撃を加える戦いが描かれる。

ほぼ救世軍の勝利となった状況の中で接収した小惑星の中では救世軍と非感染者との間のコミュニケーションも生まれつつあった。
また、アイネイアが乗り込んだドロテアにより形勢も逆転可能性を見せた。
しかし、救世軍首脳の歪んだ欲望により太陽系中にばら撒かれた冥王斑ウイルスが鍵によって解放されてしまう。

わずかな希望が次々と人の悪意やアクシデントによりかき消されていく様は鳥肌が立つ。
3冊かけたエピソードもこの巻で終了。次巻から新たなエピソードに。

小川一水: 天冥の標 6 宿怨 PART3 (ハヤカワ文庫JA)

小川一水: 天冥の標 6 宿怨 PART3 (ハヤカワ文庫JA)

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August 31, 2012

小川 一水: 天冥の標6 宿怨 PART 2

全10巻と予告されているSF大作シリーズの第7弾。

この巻では西暦2500年前後の救世軍が太陽系全域に対して宣戦布告し、《酸素いらず》の一派とともに地球に攻撃を加える戦いが描かれる。

また、前巻のラストで現れた救世軍の硬殻化が前前巻で描かれた宇宙の彼方からの対立する存在によるものかと思いきや、また別の星系からの異なる目的でやってきた知性体によるものだと、この巻の冒頭で明かされる。

その知性体から進んだテクノロジーを手に入れた救世軍は虐げられてきた恨みを全人類に対してぶつける。
その地球攻撃の描写は、申し訳ないけどカタルシスを禁じ得ない。

ラストで救世軍が知性体とのコミュニケーションを根本から誤っていたことが明かされて戦いは次巻へと続く。
その救いようのなさもまたよし。

そろそろ1巻の遠い未来設定の伏線回収が始まりそうな雰囲気。

小川 一水: 天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)

小川 一水: 天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)

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August 30, 2012

夢枕獏: 呼ぶ山 夢枕獏山岳短篇集

サブタイトルにある通り、山に関わる短篇集。

ほとんどどこかで読んだことあるものばかりだったが、まとめ読むと山を様々な角度から捉えていることが分かって面白い。
民俗学的な怪談だったり、スケールの大きいSFだったり、意外に振れ幅が大きい。

「山を生んだ男」がお気に入り。

夢枕獏: 呼ぶ山 夢枕獏山岳短篇集

夢枕獏: 呼ぶ山 夢枕獏山岳短篇集

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August 07, 2012

夢枕獏: 大帝の剣4 <幻魔落涙編>

江戸の世を舞台に大剣を巡るアクション冒険譚。

この巻ではこれまでおぼろげに描かれてきた宇宙からの存在が明確に描かれ、その目的や敵対関係も明らかにされる。

それを肉体に宿す存在として佐々木小次郎や天草四郎が登場していたが、ついにはゴータマシッダールタやガブリエルも登場。

オリハルコンを生きる金属としてうまく使い、三種の神器をオリハルコンでできているものとしてうまく絡ませている。

夢枕獏: 大帝の剣4 <幻魔落涙編>

夢枕獏: 大帝の剣4 <幻魔落涙編>

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August 06, 2012

小川一水: 天冥の標6 宿怨 PART1

全10巻と予告されているSF大作シリーズの第6弾。

この巻では西暦2499年の小惑星帯を舞台に太陽系外への航行計画と共に、先鋭化する救世軍の動きが描かれる。

前巻でストーリーの後ろにある大きな存在とその対立が示されていたが、この巻では冒頭からその要素は無視されているかのように思わせておきながら、ラストで突如現れるシーンは意表を突かれる。

巻末には年表と人物・用語集が付録。確かに分かりやすいが、頭の中でなんとなくつなぎあわせていたものが読み進めていくにつれてきれいにはまっていく感覚を楽しみにする分には蛇足かもしれない。

小川一水: 天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)

小川一水: 天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)

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August 05, 2012

菊地秀行: 吸血鬼ハンター/アナザー 貴族グレイランサー 英傑の血

作者の長いシリーズである『吸血鬼ハンター』シリーズからのスピンアウト作品第2弾。

本編の敵である「貴族」=吸血鬼が主人公となり、貴族間の争いやOSBと呼ばれる外宇宙からの敵に立ち向かう。

元々超人的な能力と永遠に近い寿命を持つ「貴族」を主人公にしているため、大抵のピンチを回避することができ、無理が効く分、ストーリーが活き活きとしている印象は第1弾と変わらない。

菊地秀行: 吸血鬼ハンター/アナザー 貴族グレイランサー 英傑の血 (朝日ノベルズ)

菊地秀行: 吸血鬼ハンター/アナザー 貴族グレイランサー 英傑の血 (朝日ノベルズ)

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June 19, 2012

小川 一水: トネイロ会の非殺人事件

SF的な要素を盛り込んだミステリー短編をまとめたもの。

「星風よ、淀みに吹け」
宇宙飛行士のための閉鎖環境長期滞在実験施設内でメンバーが殺される。
限られた空間、限られた人員という密室ものを閉鎖空間施設という新しい要素で描いている。
謎解きと動機は今ひとつ。

「くばり神の紀」
会ったこともない資産家である実父の遺産相続を申し受けた女性の話。
遺産を相続するかしないかの話に、亡くなる直前の実父の不可思議な行いに関する謎が絡んでいく。
SF的要素は入り込んでくるが、そもそも謎というほどの謎でもないし終わり方も今ひとつ。

「トネイロ会の非殺人事件」
謎の男に脅迫されている人々が10人集まって男を殺そうとする話。
ペンションを舞台に謎の男を呼び出し、10人が少しずつ死に関与する方法を取るが、関与していないメンバーがいる跡が見つかり、非殺人者を探し始める。
SF的な要素は3編の中では少なく、脅迫がネット経由で行われるくらい。
それでも非殺人者を探すという構成が面白い。
オチはまあ読めてはいたけれど。

小川 一水: トネイロ会の非殺人事件

小川 一水: トネイロ会の非殺人事件

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