November 01, 2013

NODA・MAP第18回公演「MIWA」

女と両性具有という2つの心を持って生まれてきた美少年が戦前戦中戦後と生き抜いていく話。作・演出野田秀樹。

戦前の長崎に生まれた少年、MIWA(宮沢りえ)は女性の心を持ち、さらに両性具有の安藤牛乳(古田新太)という心をその体の中に抱えながら育っていく。マリア(井上真央)と呼ばれる何人もの母親、繋一郎(瑛太)との恋を通して育っていくMIWAは原爆投下を体験し、東京へ出て酒場で歌を歌いながら、作家オスカワ・アイドル(野田秀樹)との出会いや人気俳優としての繋一郎との恋を経て歌に生きていく。

言わずと知れた美輪明宏をモチーフにした作品であって、野田秀樹作品が誰かしらモチーフとする人物を設定するのがお決まりとしても、まだ存命中でドラマティックな人物なだけにそのキャラクターに引っ張られた印象。
時代設定や人物設定を大きく変えることはせず、よく知られたエピソードを少しずつ改変しながら積み重ねていく形になっている。
ドラマティックな人物だけにテーマとなる要素は多く盛り込まれているが、結局は原爆投下に収斂されるのは致し方ないのかもしれないけれど、ちょっと残念な気もした。

2つの心を周りから見えない守護霊のような形で表現する手法はうまくできていたと思う。
美少年役である宮沢りえは確かに手足が細長くて適役だとは思えたが、一方で女性らしい体つきも隠せないので他に誰かやらせてみたい女優はいないものかと考えてしまったりもする。といっても深津絵里くらいしか思い浮かばないのだが。

~2013.10.29 東京芸術劇場プレイハウスにて~

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April 18, 2013

東京ヴォードヴィルショー『パパのデモクラシー』

戦後間もない東京の神社を舞台に神主一家と、家がないとそこへ転がり込む面々の話。

職を失った元特高警察の男を居候させていた神主の家に、元華族の夫人が家をなくして困っている面々を引き連れてやってくる。
その中の男たち3人は映画会社で労働者の権利を訴え会社と戦っており、神主にも権利を主張して女性たちを巻き込んで対立していく。
また、家事に忙殺されていた神主の長男の嫁は、女性の権利や自立という言葉に感化されていく。
さらに転がり込んでいたチンピラと神主の次男の関係に闇物資の横流しやゼネストなどが絡んで新たな時代への期待と失望が描かれていく。

民主主義や家族制度、天皇の位置づけまで大きく変わった戦後の中で、人々がそれぞれどのように生き延びていくか、それまでの考え方や生き方をどう変えていくか、それぞれの立場で必死に考えている様子は、また静かに価値観や制度が変わろうとしている現代から見ても何か通じるところがあるようにも思える。
とはいえ、観ている側も演じている側も、多分に書き手もリアルにその時代を知らないわけで、実際に起こったことをベースにしているとはいえ、そこで生きていた人たちはどんなことを感じて考えていたのだろうかと改めて思った。

最前列だったため舞台をすべて視界に入れることが出来ず、舞台の左右や上下(茶の間と物干し台)で同時進行する場面は見にくい部分もあった。

タイトルに関連するくだりは最後のシーンで唐突に出てくる印象。
もう少し前振りがあっても良かったかもとは思う。

~2013.4.5 座・高円寺1にて~

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January 12, 2013

劇団☆新感線2012年冬興行 SHINKANSEN☆RX「ZIPANG PUNK~五右衛門ロックⅢ」

秀吉の朝鮮出兵の戦国時代を舞台に大盗賊・石川五右衛門が活躍する活劇。中島かずき作、いのうえひでのり演出。

第一幕は京都の探偵方・明智心九郎(三浦春馬)の謎解きから始まり、石川五右衛門(古田新太)の盗賊仲間のひとり、猫の目お銀(蒼井優)が古寺の空海の秘宝を狙い、五右衛門を出し抜いて、堺の商人・蜂ヶ屋善兵衛(村井国夫)のところに持ち込むが、そこに隠されたさらに大きな謎を巡って宝の争奪戦が始まる。
折しも豊臣秀吉(麿赤兒)は朝鮮出兵の真っ最中で、石田三成(栗根まこと)や前田慶次郎(橋本じゅん)くらいしかおらず、イベリア半島のコルダニア国からの密使、シャルル(浦井健治)、国を追われたアバンギャルド公爵夫人マローネ(高田聖子)なども日本に入り込み、キャストが揃ったところで休憩。

第二幕は敵味方が入り乱れつつ、空海の謎解きがあり、盗賊と探偵の恋物語があり、探偵の正体が明らかになり、堺が秀吉に逆らい独立を叫ぶも、その裏に暗躍する商人たちの陰謀を打ち砕くべく、五右衛門や前田慶次郎が奮戦する。

基本はミュージカルなので最初から最後まで歌が中心。セリフ中心なのはラストシーンくらい。
アクションも多いので、ミュージカルと言うよりは歌謡ショーという印象も。

二階席からはオーケストラピットが見えたが、そこでバンドによる生演奏がされているのが興味深かった。
舞台に合わせて4時間近く演奏し続けるのは大変だろう。

舞台はメインとなる弧を描いた壁が、その表面に木の塀や石塀を映し出す演出により場面転換を分かりやすく見せていた。
ステージ両脇のスクリーンはメインの壁と同様だが、歌の場面では歌詞などを映し出し、初めて観る観客にも親切な印象。

多分にずっと観ているファンには面白いポイントもあるのだろうが、それらが分からなくても面白く見ることはできる。

~2013.1.4 東急シアターオーブにて~

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September 21, 2012

NODA・MAP第17回公演『エッグ』

寺山修司の未完成脚本「エッグ」を再現しようとする話。野田秀樹作・演出。

劇中劇の形で架空のスポーツ競技「エッグ」でオリンピック出場を目指す選手たちとそのスター選手とスター歌手(深津絵里)、チーム監督(橋爪功)、チームオーナー(秋山菜津子)のやり取りが描かれる。
演劇監督(野田秀樹)は寺山の脚本の罠にはまり、競技内容や時代を遡りながらオリンピック出場を閉ざされる選手たちの様子が何度も繰り返される。
やがて、「エッグ」という競技がワクチン生産工程から生まれたというストーリーから日中戦争さなかの満州国の様子が描かれる。

劇中劇という形式、時代や舞台を変えながらのリピートは分かりにくいかもしれないが、それほど難解という感じはしない。
前半の「つぶやき」という今風なキーワードで情報を表し、「音楽」と「スポーツ」で大衆をコントロールする危うさは面白かったが、ワクチンという「科学技術」の成果が現れた辺りで怪しくなり、結局は「戦争と平和」でまとめてしまうのか、という印象。
いくつも面白そうな切り口は提示されるけれど、トータルとしてそれらをまとめるようなキーワードは読み取れなかった。

舞台装置はロッカールームのロッカーが可動式になって効果的に使われており、最後まで仕掛けがわからない使い方もあった。

出演陣では妻夫木聡が前半のスター選手に対する生意気な新人選手のシーンは良かった。また、仲村トオルが想像を上回る見事な肉体を披露しており、まるでEXILEのよう(EXILEを実際に見たことはないけれど)だった。

事前にまったく予備知識を入れずに観たが、少しは入れていった方が良かったのかも。

~2012.9.19 東京芸術劇場プレイハウスにて~

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June 07, 2012

劇団☆新感線2012春興行 いのうえ歌舞伎「シレンとラギ」

戦いを刀で行う時代設定を背景に争う2つの国の間で翻弄される人々を描いた活劇もの。中島かずき・作、いのうえひでのり・演出。

王の代替わりにより政争渦巻く北の国に仕える武士・キョウゴク(古田新太)の部下である暗殺者・シレン(永作博美)は、20年前に仕留めたはずの南の国を統べる教団のゴダイ大師(高橋克実)が復活したと聞き、キョウゴクの息子・ラギ(藤原竜也)と共に南の国への潜入を命じられる。

休憩前の前半では、2つの国の状況、それぞれの登場人物の思惑が描かれ、そして政治的な罠や裏切りにより敵味方が入り乱れる中、隠されていた事実が明かされる。

休憩後の後半は、明かされた事実により新たな人間関係の中で暴走が始まり、2つの国の崩壊していくさまが描かれる。

設定も難しくなく、ストーリーも分かりやすいが、救いのあるラストシーンにカタルシスは乏しい。
めまぐるしく変わっていく舞台装置は素晴らしいが、回想シーンなどもなんの説明もなく挿入されるため、慣れないとどこのシーンなのか分かりづらいかもしれない。その意味では良くも悪くもテレビドラマっぽい構成。
また、マイクを使った音声は聞き取りづらいこともあり、特にオープニングでは舞台袖での会話にしばらく気付けなかった。

休憩挟んで3時間ちょっとの長丁場だが、退屈さを感じさせることは殆ど無く、スピード感のある展開はさすが。

~2012.6.5 青山劇場にて~

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April 27, 2012

東京ヴォードヴィルショー『トノに降る雨』

戦国時代を舞台に隣の領地の当主にいきなり攻めこまれ山中に逃げ込んだ当主の話。中島淳彦作、ラサール石井演出。

生田家の当主(佐藤B作)は隣の領地の細山田家(佐渡稔)の奇襲にあい、山中に逃げ込む。正室(栗田桃子)や母親(松金よね子)を置き去りにし、側室や家臣らと逃げた当主だったが、足軽や捕虜(えなりかずき)、火縄銃職人(ベンガル)、離れて暮らす弟(山口良一)らも絡んで迫りくる敵の影に怯えながら自らの生い立ちを明らかにしていく。

このところ、劇団作品のひとつのモチーフになったいた印象のある「自分は何者だったのか」という設定を可能にする複雑な家族関係も、戦国時代を舞台にすることでなんでもアリの状況を作りやすかったように観られた。

一応、ウリだったようだが、場面転換ごとの前川清の歌は少々うざかった。

劇場はそれほど大きくないが、ベンチタイプの椅子もそれほど座り難くなく、舞台も見やすく好印象。

~2012.4.20 三軒茶屋シアタートラムにて~

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September 29, 2011

東京ヴォードヴィルショー『アパッチ砦の攻防』

引越し間もない夫婦と、その部屋で娘の婚約を祝いたいと考えた前の住人の話。三谷幸喜脚本。

鏑木(佐藤B作)は事業に失敗して億ションを手放すが、離婚して離れ離れになっていた娘(金澤貴子)の婚約を聞き、まだ億ションに住んでいる振りをするが、そこへ留守のはずの新しい住人(角野卓造)と妻(沖直未)が帰ってきてとっさにテレビ修理を請け負った電気屋の振りをする。
父親の態度に喜んだ娘は婚約者(大森ヒロシ)、婚約者の両親(市川勇、市瀬理都子)、別れた妻(あめくみちこ)を部屋に呼ぼうとする。
一方、新しい住人のもとにも、不動産屋(佐渡稔)や自治会に入れようとする隣の夫婦(たかはし等、フジワラマドカ)がやってきて、娘(山本ふじこ)も帰ってくる。
鏑木はそれらの訪問者たちに対して部屋の主人と電気屋を演じながら、何とか事態を収めようとする。

舞台は億ションのリビングのみで、三谷幸喜が得意とする典型的なシチュエーションコメディ。
次々と現れる登場人物たちに嘘をついたり、顔を隠したり、時には正体もばれながら、2つの顔を保とうとする鏑木の姿は確かに面白いが、どこまでも破綻させない脚本の出来に感嘆する。

また、新しい住人が帰ってくる僅かな間に何かをしようとするところが笑いのツボではあるのだが、どうにも登場人物の緊張感が伝わってきて素直に笑えないのは自分だけだろうか。

~2011.9.27 新宿 紀伊國屋ホールにて~

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May 02, 2011

3軒茶屋婦人会「紅姉妹」

第二次世界大戦後のニューヨークで生きてきた3人の日系人の話。わかぎゑふ脚本作品。

2012年の春、ニューヨークはソーホー地区にあるバー「紅や」でミミ(篠井英介)がグラスを傾けるところから始まり、次第に年代を遡っていく構成。

次の2001年の1月1日のシーンで、ミミにジュン(大谷亮介)とベニィ(深沢敦)を含めた3人が1人の男性を愛し、1人の息子を育て上げたという事実が明らかになり、さらに遡っていくことで3人それぞれの過去や関係が明らかになっていく。

1990年には息子の離婚、1977年には息子の結婚、1960年には息子がハワイの学校に進学、と息子の節目となるエピソードごとにバー「紅や」で集まる3人により、その時点での立場や関係、トラブルなどが描かれる。

その間、和服の着付シーンや3人でのアカペラなど見所を交え、1945年に3人が出会うところで終わる。

基本的に3人とも女装する事が前提となっている舞台だが、その縛りをうまく戦争をくぐり抜けてきた米国で生きる日系人という形の中で描いている。

時代を遡っていくという構成上、3人は老女姿で始まり、徐々に若返っていくわけだが、2人は老女からオバサンぐらいまでしか見た目は変わらないのに、篠井英介だけは老女から中年女性、魅力的な大人の女性、最後は小娘に見えるまで若返っており、良い意味での「化け物」な役者が見られる。
それだけでも観る価値はあるが、それだけと言うにはもったいない作品。

~2011.4.26 紀伊国屋ホールにて~

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February 25, 2011

西荻の会「ロング・ロスト・フレンド」

暴力団組長が作った極道専門の老人ホームを舞台に巻き起こるトラブルを描いた作品。

暴力団組長の松山正次郎(伊東四朗)が作った老人ホームは、スタッフチーフの藍子(あめくみちこ)、スタッフの春(岩佐真悠子)はカタギだが、スタッフには三下の串本(窪塚俊介)、入居者には元組員の宇田(市川勇)、元警官の佐々木(角野卓造)のいる極道専門の老人ホームだった。

そこへ佐々木の紹介で黒崎(佐藤B作)が入居希望でやってくる。黒崎と因縁浅からぬ松山は入居を渋るが、脳梗塞を患い昔の記憶が欠けているという黒崎は性格も人柄も変わっており嫌々入居を認める。

松山は想いを寄せる藍子に聞かせる形で35年前の出来事を挟みつつ、ストーリーは展開していく。
松山と藍子のやり取りに松山の本妻・多恵(松金よね子)が絡み、組同士の抗争、老人ホームの資金難という困難に悩む本筋に、松山の正体や黒崎の記憶などのスパイスがうまく散りばめられていく。

舞台は老人ホームのスタッフルームのみで、35年前の回想シーンはライティングと多少の飾りでスタッフルームの一部を組事務所に見せており、場面転換はシンプルかつスムーズで分かりやすい。

ストーリーの謎解きに当たる部分は最初から丸分かりのもあるし、驚かされたものもあり。
もちろん、全編に渡って笑いどころは尽きないが、ラスト近くの松金よね子のセリフにはホロリとさせられたりもする。

総じて平均年齢の高い役者陣で安定感はあるが、若手もまぁまぁ。
窪塚俊介もよかったが、手足が長すぎるモデル体型でチンピラに見えにくいのは残念といえば残念。

~2011.2.22 下北沢本多劇場にて~

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January 21, 2011

三谷幸喜作・演出「ろくでなし啄木」

石川啄木と恋人、友人が3人で過ごした温泉宿の一夜を描いた作品。

テツ(中村勘太郎)とトミ(吹石一恵)が没後10年経って建立された啄木記念碑の前で、まだ石川一(藤原竜也)と名乗っていた啄木を含めた3人で過ごした12年前の温泉宿での一夜について語り合う形で始まる。

カフェの店員だったトミは客として来ていた一と付き合うようになり、一はトミの家にころがり込むようになって2ヶ月、一に援助しているテキ屋のテツの3人は東北の温泉宿への旅行を企画する。

その温泉宿で一は恋人であるトミに対して、想いを寄せているテツを誘惑し、借金を返すための金を脅し取る計画を持ちかける。
当初は拒んでいたトミだったが、一のために計画を実行するものの、計画は想定外の方向へズレていく。

前半はトミの告白、後半はテツの告白として、同じ温泉宿の一夜を異なる視点から二度見せるという構成となっている。

続けて、異なる視点での告白により浮かび上がる謎と、そこで明らかになる石川一の思いが語られ始める。

基本的に舞台は温泉宿の一室であり、隣の一室と合わせてひとつの場面とするならば、3人のみの登場人物といい、三谷幸喜の得意とするところのシチュエーションコメディの要素も感じられる。
二つの部屋を舞台の前後に配しての異なる視点での舞台装置の転換は見事。

基本的にはダメ男として描かれる石川啄木の、作家として破天荒な状況に自分を追い込まなければならないというプレッシャーが大きなテーマと感じられるのだが、これは昨年に観た東京ヴォードヴィルショーの「無頼の女房」でも同じように感じられた。
演劇界ではこうした文士を描くことが流行っているのか、単純に描きやすいのか。

休憩時間も含めて2時間45分とされている上演時間だが、さほど長さは感じられなかった。

この3人の役者と三谷幸喜という組み合わせは大河ドラマ「新選組!」を思い出させるが、その息の合った演技も良し。

~2011.1.18 東京芸術劇場中ホールにて~

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